天井はどうしてあるんだろう。あらためて考えてみるとよくわからない。屋根は雨を防ぐため、柱はその屋根を支えるため、壁や障子は部屋を仕切るため、ドア、床、畳、いずれも用途は誰でも知っているとおり。ところが天井は、何の役に立っているのかはっきりしない。なくてもすみそうだし、事実、私の生まれ育った田舎の茅葺きの家なんか、囲炉裏の上方を見ると、太い丸太梁が走る黒々とした小屋組の空間がムキ出しになっていたし、部屋によると、根太天井といって、二階の床を支える根太とその上に張られた床板をそのまま見せていた。
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ちゃんと天井を張ったお座敷もあったけれど、小屋組ムキ出しでも根太天井でも暮らしに困らなかった。屋根や床や壁なんかと違って、なくったってどうってことない。その割には、天の井戸なんてエラソーな名前だ。中国では天花板と書き、日本と似た命名だが、王宮でも住宅でも天井は張らないのがふつう。いつからあるのか。縄文人や弥生人は、そんな不自然なものいらない。伊勢神宮の天照大神もなくてよいと言い、今でもない。飛鳥時代の法隆寺をはじめとする仏教建築の中で初めて天井が出現する。仏教と一緒に大陸から日本列島に上陸されたのだった。同じ神様でも、どうして土着の神は天井いらずなのに、仏はいるのか。それは、土着の神は目に見えないが、仏は仏像という物としての姿をとっているから、と私はニランでいる。天井がないとどういう事態が出来するんだろう。子供のときの経験が参考になる。頭上に大きな梁がいくつも重なりながら走っていて、その上にはチリやホコリがしだいにたまってゆく。梁の上方には厚く葺かれた茅が層をなしていて、ベトっとして、まことに具合がいいらしく、さまざまな虫が住み着き、フンや脱皮した殻を落とす。そうした虫をねらってネズミが入り、梁と茅が接するあたりから穴を掘って巣を架ける。ネズミにとって梁が道だから犬と同じように道ばたでフンをする。