一室多灯型のもう一つの利点は、右のような光の濃淡による空間の境界やつながりが、時と場合によって自由に変えられることである。複数の光源のいくつかを選んでつけたり消したりすれば、室内の雰囲気をさまざまな形に演出することができる。たとえば多数の来客があるホーム・パーティのような時には、ありったけの照明を点灯して、明るくにぎやかな感じにすることができるし、子どもが寝静まってから、夫婦二人だけでゆっくりお酒を飲んでいるような場合には、食卓の上のペンダントだけを点灯し、その光の輪の中で、精神的に寄りそうような、落ち着いた雰囲気をつくることもできる。
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そして、また一人で夜ふかしをして推理小説を読む時には、読書用の光源で自分一人を中心にした落ち着いた雰囲気をつくることができる……という具合である。このような雰囲気の変化は、均一な明るさを求めるのとはまったく逆の、明るさをあくまで暗さと共存させるという感覚から生じる。つまり照明の役割は、夜の闇を消し去ってそれを擬似的な昼に変えることではなく、闇と共存しつつ輝くことにある。光の輪の周囲に澱む闇は、家の外に広がる夜を思いださせる。眠りに入る前のひととき、現代人が忘れがちな、夜の暗さと長さ、怖さとやさしさを思い起こすのは、むしろ自然な生き方ではないだろうか。